今回は、株価が5年間下落トレンドで、配当利回りが高くなっている、日本たばこ産業・JT(2914)について分析していきたいと思います。
昨今の配当株の人気により、個人投資家にも人気になっている銘柄ですので、視聴率(チェックしている個人投資家)が高いと思いますので、今回分析してみます。
私個人の同社に対する視点から会社をご紹介しているものです。投資・その他の行動を勧誘したり、推奨したりするものではありません。銘柄の選択などの投資にかかる最終判断は、ご自身の判断でお願いいたします。当ブログをご利用になったことで生じたいかなる損失・損害については、当方では責任を負うものではありません。予めご了承ください。
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日本たばこ産業(JT)のビジネスモデル
日本たばこ産業(JT)のビジネスモデルです。通称:JT法に守られた独占の国内タバコ事業で得られたキャッシュを海外のタバコ事業のM&Aやタバコ以外への事業に多角化をするのが、同社の基本的な戦略です。
過去には飲料などにも投資しておりましたが、事業規模が小さく国内の戦いで不利という理由で売却をしました。その売却理由を裏付けるように、現在は海外のタバコ事業を拡大しており、グローバルでシェアを取る方向に軸足が向いています。
日本たばこ産業(JT)の業績
次にJTの事業別の売上、営業利益の構成比です。M&Aなどにより、売上・利益の両方が既に海外の事業の方が国内の事業よりも大きくなっています。
またタバコの販売本数でも既に国内の販売本数を大きく超過しています。
画像引用:日本たばこ産業アニュアルレポート2018
皮肉ではありますが、この海外事業の伸長も同社の株価の重しの一因となっている部分ではあります。
海外のタバコ市場の売上シェア・ランキングからの考察
海外のタバコ市場の売上ランキングを見ていきましょう。海外で存在感を発揮できない企業が多い中で、日本たばこ産業は4~5位と中々の存在感を放っています。
しかし、ここで意識しなければならない点が2つあります。
1.JTよりもシェアの多い会社が低PER・高配当の状態で株価が推移している
2.世界シェア4~5位の日本たばこ産業(JT)をわざわざ選んで買う意味
アメリカ高配当投資で人気のBritish America(BTI)は、タバコの売上シェア2位ですが、2020年コロナ前の時点ではPER10倍前後で配当利回り7%近い水準で推移していました。
そんな中で、世界シェア4~5位で推移している日本たばこ産業(JT)を買う意味(理由)は問われます。先ほど規模の原理が働くという日本たばこ産業自身の言葉からも、買われる優先順位はどうしても下がると言わざるを得ないでしょう。
深刻な外国人株主の減少
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年2Q | |
政府および地方公共機関 | 33.4% | 33.4% | 33.4% | 33.4% | 33.4% | 33.4% |
金融機関 | 15.9% | 17.2% | 17.3% | 18.6% | 19.9% | 19.0% |
金融商品取引業者 | 2.3% | 2.8% | 2.8% | 3.3% | 3.2% | 4.5% |
その他法人 | 1.3% | 0.6% | 0.8% | 1.0% | 1.1% | 1.1% |
外国法人(個人以外) | 33.6% | 32.1% | 30.9% | 27.4% | 20.0% | 16.9% |
外国法人(個人) | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% | 0.0% |
その他個人 | 13.7% | 14.0% | 14.8% | 16.3% | 22.4% | 25.2% |
有価証券報告書から、株主の推移を見てみると、外国人投資家が減り、国内の個人投資家が増えている構図です。
日本たばこ産業(JT)の財務面の不安
次に財務面を見ていきます。財務面できになるのはやはり”のれん”ですね。数々の海外企業の買収により積み上がった”のれん”がその価値を維持できるのかが、同社の評価の最大の分かれ目でしょう。
“のれん”と無形資産の合計が約2.4兆円となり、純資産と近しい金額になる点が同社の最大のリスクだと判断します。
純有利子負債(現金-有利子負債)は約0.7兆円(約7,000億円)と、少なくはないですが調整前のフリーキャシュフローが約0.4兆円(約4,000億円)ぐらいありますし、自己株式も同等にありますので、今の所は問題ない水準と個人的には認識しています。
日本たばこ産業(JT)は配当を維持できるか?
年度 | 純利益 | 配当総額 | 配当性向 | FCF |
2017年度 | 3,924億円 | 2,507億円 | 64% | 726億円 |
2018年度 | 3,856億円 | 2,687億円 | 70% | 1,056億円 |
2019年度 | 3,481億円 | 2,856億円 | 79% | 4,042億円 |
2020年度 見込み |
3,050億円 | 2,745億円 | 90% | 3,700億円 |
日本たばこ産業は高配当であるため、配当性向(純利益に占める配当金支出の割合)が高いので、高配当を維持する余力が毎年心配されます。
個人的には、FCF(フリーキャッシュフロー)が配当金額と比較して1,000億前後のバッファがあるので、営業利益よりは余力のある方だと思います。
配当を支払っても1,000億円のバッファがあります。FCFの原資から借入を返済したり設備投資したりなど、経営陣側には選択肢があるように見えますが、FCF的に余裕があっても一般的に配当性向が100%を超えるような値にはしないと思うので、そうなると減配も想定しないといけないですね。。
日本たばこ産業(JT)のリスク
最後に同社のリスクを考えてみます。国内外に多数の問題を抱えていますが、これは同じく医療や通信などの規制産業に共通する項目ですので同社だけが抱えている問題ではありません。個人的な判断としてリスク度「高」としました。
それ以外については、リスクといえばリスクですが、企業の存続に直ちに影響するものではないと言えます。また国内は風当たりは強いでしょうが、貴重な税収ですので、致命傷になる政策は打たれないと予想します。
日本たばこ産業(JT)の分析まとめ
リスク度「高」の海外での訴訟・規制については、”のれん”に直接効いてきますので、企業の存続に影響が大きいアキレス腱です。この訴訟・規制リスクと配当の天秤で判断をするべきだと個人的には思います。
株価は市場が決めますが、この不安は買付ボタンを押すさいに気にはなりますね・・・
ただ、仮に訴訟に負けて多額の金額が必要になったとしても、会社として生き残る手段はいくつか思いつく点や大株主が国であることを考えると、比較として適切ではありませんが、某電力会社のように最後は救うとは思っています。