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ストックビジネス(サブスクリプション)・フロービジネスをわかりやすく図解しました

ストックビジネス(サブスクリプション)・フロービジネスをわかりやすく図解しました

ストックビジネスとフロービジネス、サブスクリプションが「ぶっちゃけよくわからない」「知ったかぶりしている」と言う方は実は多いと思います。

色々な方と会話をするときに感じているのですが、会話の中で「この人はストックとフローがよくわかっていないな・・・」と思ってしまうことがあります。

この記事では、ストックビジネスとは何か、フロービジネスとは何か。最近流行りのサブスクリプションとの差分、重要視している数字について図を多めに用いて解説してまいります。

読み終えたときには、知ったかぶりをする必要がなくなるぐらいの知識を得ることが出来ているはずです。

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ストックビジネスとは?ストックビジネスの意味・定義・事例

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ストックビジネスの結論です。ストックビジネスの定義は、“新たに契約を結ばなくても、顧客から継続して対価を得られるもので分割払いでないもの”を指します。契約後に解約されない限り、基本的に継続して収益を得ることができます。

身近な事例で言えば電気やガス、水道、通信費などのインフラ関連、保険料などが該当します。

  • サービスを続けている限り契約が続き、原則として期限の定めがないこと。(分割払いでないこと)
  • 月額・半年・年額など一定のサイクルで顧客の口座から定期的に集金ができること

ストックビジネスのよくある誤解=分割払いはストックビジネスではない

よく誤解をされている方に多いのが、「単なる分割払いをストックビジネスと勘違いしている」ことです。確かに顧客から継続して対価を得られますが、分割の期間を終えたタイミングで新たに契約を結ぶ必要が出てくるからです。

具体的な例を出すと、携帯電話の通信料部分はストックビジネスと言えますが、端末の分割払いの部分は厳密にはストックビジネスではありません。

ストックビジネスのメリット・デメリット。ストックビジネスの魅力

ストックビジネスのメリット・デメリットとは?
メリット・継続的な収益が得られる
・外的な要因に左右されにくい
デメリット・短期的に売上が立ちにくい
・原価がある商材の場合、費用が先行する
・サービスを提供し続ける必要がある(保守体制)

ストックビジネスのメリット・デメリットについて挙げてみました。ストックビジネスは良いところだけではなく、悪いところ(大変なところ)もありますので、万能のビジネスモデルというわけではありません。

ストックビジネスのメリット

ストックビジネスのメリットは、顧客になってくれさえすれば解約が生じない限り継続した収益を定期的に得られる点です。営業活動をしなくても収益が得られる為、例えば今回のコロナウイルスなどにより自粛をしていても顧客から収益は入ってきます。

ストックビジネスの魅力

定期的な収益を契約期間に応じてもらえる為、先の見通しが立ちやすくストックビジネスは非常に経営が安定しやすいのが特徴です。これはデメリットにもなりますが短期的に業績が変動しにくくなります。安定した先の収益が見通せる為、経営者サイドから見ると総じて魅力的なビジネスモデルです。

ストックビジネスのデメリット

デメリットとしては、売った段階で売上が発生するフロービジネスと違い、長期的に顧客から売上を得るモデルのため、ストックビジネスの多くの商材の場合、獲得コストや原価分のコストが先行します。そしてその構造上の問題として短期的に売上が急増しにくいモデルです。(反対に急減もしにくい)

またサービスを提供する契約をしている以上、保守体制などを構築しサービスを提供し続ける必要があり、サービス提供元は基本的に現金が先に出ていき、後から回収するのが基本のビジネスモデルです。

ストックビジネスのデメリットの具体的な事例

災害時に、電力や通信といったインフラ関連企業が必死に復旧に勤しんでいますよね。自分たちも被害に会うかもしれない中で復旧作業をするのは、このストック(電気代や通信料)に対する役務だからです。

次にコストが先行する点ですが、例えば電力会社は電力をお客さんから支払ってもらう前に電力を供給していますよね。電気の供給には石油や石炭などを仕入れて電気を作る必要があります。このようにユーザーから電気代をいただく前に、材料を仕入れる為、支払いが先行します。

ストックビジネスとサブスクリプション・リカーリングビジネスとの違いは?

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最近流行っている「サブスクリプション」と「リカーリングビジネス」との違いですが、結論としてどちらも大きなストックビジネスと言う枠組みの中の一つです。あまり意識せず「ストックビジネス」として捉えていただいて問題ないと思います。

  • サブスクスプションモデルとは”定期購読””会費”という語源の通り、”定額で定期的”な継続課金のモデルを指します。使用量に関わらず、一定額の金額を得るものが基本です。
  • リカーリングビジネスとは売って終わるのではなく、繰り返し使ってもらうことで、顧客から継続的な収益を得るビジネスモデルです。電気やガスなど”あらかじめ定められらた金額”ではなく、使用量に応じて金銭が発生するものや継続的な消耗品などが挙げられます。

擬似的なストックビジネスとは?(ジレット)

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ウォーレン・バフェットさんが髭剃りメーカーのジレットに投資した際の話が有名です。ジレットは髭剃りの持ち手の部分と替え刃がそれぞれ独立しており、交換式のスタイルである為、持ち手を持っている方は必然と替え刃を購入しますので継続的に替え刃が売れ続けるというものです。

このように、極めて帰属性の高いフロービジネスは”擬似的”なストックビジネスとして表現されることがあり、近年はリカーリングビジネスとして表現されています。

ストックビジネス(サブスクリプション)銘柄の収益の計算・分析方法の方程式

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ストックビジネスを中心とする企業の基本的な収益の方程式は「顧客数×ARPU(1ユーザーあたりの平均利用額)の掛け算」です。

両方とも増えていれば売上の面積が掛け算で積み上がります。どちらかが減少した場合は、減少していない方の上昇で減少幅を吸収できるかがポイントです。そして両方が減少した場合は両方掛け算で減少します。

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全ての方程式が掛け算で成り立っていますので、顧客数、ARPU、平均利用期間がどれか少しでも上昇すると、掛け算で業績に効いてくる点も魅力であり、株価が高くつきやすいポイントです。

ストックビジネス(サブスクリプション)銘柄の収益の重要な指標

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ストックビジネス(サブスクリプション)銘柄を分析する際に確認すべきポイントは5つの要素が重要な確認ポイントです。

  • 顧客数(≒純増数)
  • ARPU(1顧客あたりの平均利用額)
  • 解約率(チャーンレート)
  • 平均顧客獲得単価
  • 平均の継続利用期間

ストックビジネスのおける顧客数・純増数

◆期中の純増数の考え方
「期中の顧客の増加」ー「期中の顧客の減少(解約)」=「期中の純増数(解約が多い場合は純減数)」
◆期末の顧客数の考え方
「前期末の顧客数」+「期中の顧客の純増数(解約が多い場合は純減数)」=「期末の顧客数」

ストックビジネスの企業について最初に見るべき指標は契約しているユーザーの現在の顧客数と純増数(※)です。シンプルに顧客基盤の拡大が収益に直結するビジネスモデルのですので、期末の顧客数がどう増加しているかが重要です。

※一定の期間の間の新規ユーザーから解約ユーザーを引いたものを純粋にユーザーが増加した数として、純増(ユーザーが減少した場合は純減)として使われます。

ストックビジネスのおけるARPU

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ARPU(アープ、アルプ)とはAverage Revenue Per Userの略で、1ユーザーあたりの平均利用額です。類義語で、アカウントを分母とするARPA(〜アカウント)や課金ユーザーのみに絞ったARPPU(〜ペイユーザー)などがあります。

この指標は開示されているケースとしないケースがありますが、仮に開示されていなくても売上とユーザー数があればざっくりと計算できます。

あるストックビジネス企業の開示例
①売上②ユーザー数③ARPU
1Q9,000,00010,000月300
2Q9,900,00011,000月300
3Q11,520,00012,000月320
4Q10.800,00012,000月300

このように、ストックビジネス分の①売上と②ユーザー数の両方が開示されている場合は、①と②の割り算で③ARPUを算出することが可能です。(四半期開示の場合は3ヶ月分ですのでさらに3分の1にする必要があります)

少しの工夫で求められますので、企業を分析する際は算出してみましょう。もちろん、ユーザー数とARPUの両方が伸びていることが望ましいです。

ストックビジネスの解約率(チャーンレート)

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解約率(チャーンレート)については企業が開示してくれないとわかりません。ちゃんとしたストックビジネスの会社であれば一般的に開示してくるものと理解してもらって良いと思います。

ストックビジネスは一般的に長い期間にわたり利用料を稼ぐモデルですので、途中で解約するユーザーが多いと将来の収益に大きな差が出ます。

(例)月額1,000円のサービスを100名契約(※整数のみ計算)

【解約率1%の場合の収益】
・36ヶ月後のユーザー数=70名
・36ヶ月目単月の収入=70,000円
・3年間の収益=3,034,000円
【解約率2%の場合の収益】
・36ヶ月後のユーザー数=49名
・36ヶ月目単月の収入=49,000円
・3年間の収益=2,582,000円
このように、わずか1%の解約率の違いで3年間の収益で見たは2割ぐらい差が出ます。解約率に狂いが出ると、ストックビジネスの収益には大きく影響が出ますので注意が必要です。

ストックビジネスの平均利用期間(LTV)

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ストックビジネスというのは売り切りのサービスではありませんので、顧客がサービスを長く続けてくれれば続けてくれるほど儲かる仕組みです。

1加入者がどれくらい利用してくれるかの期間を平均利用期間と言い、この期間にもたらしてくれる収益をLTV(ライフタイムバリュー)といいます。

平均利用期間が短いストックビジネスというのは、解約率が高いということの裏返しで、純増数を増やすのが難しいということです。つまり毎期末の顧客数を維持するのが大変です。できるだけ長い利用期間のサービス・企業の方が望ましいでしょう。

ストックビジネスの平均顧客獲得単価

ストックビジネスというのは、顧客を獲得するためのコストをシビアに判断します。例えば「3年間で3万円お客様から収益を得られるのであれば1万円までは獲得コストを掛けて良い」と言った形で、得られる収益と掛けて良いコストのバランスを取ります。(ストックビジネスはコスト先行で現金が先に出ていくため)

これらの1顧客あたりに掛けている獲得コストを平均顧客獲得単価と言います。これは商材によってかなり数字に差が出ますので、その会社単位で適切かという点に加えて、業界平均と比べてどうかという横の比較も求められます。

ストックビジネス(サブスクリプション)売上・原価・利益・キャッシュフロー

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★売上・営業利益について
ストックビジネスの売上は基本的に長期に渡って計上されます。獲得してしばらくは支払い先行になります。原価や獲得コストが高い場合、短い期間の営業利益は赤字になるケースもあります。ただし、会計方法によって異なります。(一括して計上するところも、償却するところもあリます。)
★原価について
仕入れ等で原価が生じて、年額または月額払いで回収するケースは一時的に仕入原価分の現金回収が遅れます。つまりキャッシュフローが悪化しますのでこの点には注意が必要です。特に、今まで売り切りを生業にしてきた企業がストックビジネスを始めるとキャッシュフローの状況が変わります。
★獲得コストについて
ストックビジネスにおいて獲得コストは非常に重要です。一般的に売り切りの場合は全ての売上をその場で回収できるのに対して、サブスクは長期利用で回収するモデルです。
獲得コストが高いと、獲得が先で料金の回収が後になりますので損益分岐点(リクーププライン)を超えるまで、キャッシュアウトの先行額が大きくなるだけでなく、毎月の利用額から黒字化するタイミングが後ろに倒れます。当然、獲得コストが安くユーザーからしっかり利用料を取れて、リクープラインが短い方が良いです。
★生涯収支について
利益については、損益分岐点を超えた顧客についてはサービス・顧客の維持費こそかかりませんが、追加のコストは発生しにくいので年を重ねる毎にミルフィーユのように利益を積み重ねることができます。

ストックビジネスのミルフィーユのような積み上げについて

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ストックビジネスの特長して毎月・毎年の売上や利益の積み重ねによってミルフィーユのように売上・利益が計上されていきます。これ自体は非常に美しいのですが、会計期間という1年なり3ヶ月で区切る期間が存在する以上、何ヶ月分の売上・利益が期中に計上されるかという点については確認が必要です。

またストックビジネスの多くが上記の表のように下期傾注になりますので、1Qとか2Qで通期の進捗率が悪いと誤った判断しないようにしましょう。

ストックビジネスの企業を評価する際のその他注意点

  • 営業利益率(商材の競争力)
  • 貸し倒れ比率・貸し倒れ金額
  • その企業におけるストックビジネスの比率

ストックビジネスの企業を評価する際のその他の注意点として3つを挙げておきます。

1つめの営業利益率は、そのまま商材の競争力と言えます。例えば勘定奉行などのリプレイスが難しく参入障壁の高いビジネスは営業利益率50%を超えております。

2つめの貸し倒れ比率・貸し倒れ金額ですが、これはストックビジネスは長期的にユーザーから回収するモデルですので、売り切りのビジネスと比べると相対的にリスクが上がります。貸倒引当金をある日突然引き上げると利益を押し下げますのでちゃんと料金が回収できているかは注意が必要です。

3つめの、「企業内のストックビジネス比率」ですがストック比率が高すぎてもキャッシュフローや企業の成長力の観点ではマイナスですし、低すぎる場合はストックビジネスのいいところや収益インパクトの面でマイナスです。

フロービジネスとは?フロービジネスの意味とは?

フロービジネスとは、契約時に一括してに売上が立つものです。需要に応じて売買や契約を伴い、そこで契約や支払いが完了することから非常に多くのビジネスがフロービジネスに該当します。日常の購買活動の大半がフロービジネスと言っても過言ではないでしょう。

一括して売上が立ちますので、収益がわかりやすいことや大ヒット商品に恵まれると業績一変することが特徴としても挙げられます(例:良くも悪くもタピオカ屋など)

フロービジネスのメリット・デメリット

フロービジネスのメリット・デメリットとは?
メリット・収益化が早い
・営業利益、キャッシュフローが見込やすい
デメリット・継続的に売れるかどうかわからない
・外的な要因にかなり左右される
・営業し続けなければならない

フロービジネスのメリットは何と言っても、売上や支払いがストックビジネスよりも早い事です。売れれば短期的に売上も利益も立ち、現金も入ってきますので会社は一気に潤います。

反対にデメリットはそれが先々も売れるかどうかがわからないことです。今回コロナウイルスで自粛などがありましたがこういう外的要因はモロに影響を受けてしまいます。またタピオカのようにブームが去ってしまうと継続的に売り続けるのも難しくなります。

ストックとフローの戦略的な投資に対する考え方

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ストックビジネスとフロービジネスにおいては戦略的な投資の考え方において差が生じることがあります。

(例題なので、この商材だとフローの方がビジネス的にはいいのですが・・・)例えば60万円の商材(LTVは5年)で、1顧客あたり20万円の広告費を投じる場合、ストックビジネスでは広告費を投じた年(年度)に利益はマイナスになってしまいます。一方でフロービジネスの場合は広告費を投じた年に利益にも寄与します。

一般的にストックビジネスが主体で「来年成長のアクセルを踏みます!」というと来年の営業利益はマイナスに振れることが多いです。一方フロービジネスが主体の会社で「来年成長のアクセルを踏みます!」と言った場合、計画通りに売れれば利益も一緒に付いてきます。

このように戦略的な投資一つを取ってもストックビジネスとフロービジネスでは考え方や利益の出方が異なりますので、全体のビジネスモデルを理解して読み解くことが必要です。